アカデミー代表挨拶


 東アジア共同体構想をめぐる動きが活発化している。開発に立ち遅れていた東アジア地域が、日本を先頭に急激な経済発展を成し遂げ、世界から注目し始めてから久しい。

 グローバル化が進展している世界経済の潮流の中で、東アジア地域の諸国はそれぞれ問題点を抱えている。先発国日本はいち早く高齢社会となり、長年にわたって蓄積した技術を有効に活用しないでいる。早期定年を余儀なくされた技能労働者の熟練技能は、宝の持ち腐れとなっている。

 一方、韓国や台湾さらに中国には、日本の熟練技能労働者を必要としている産業が多い。日本の熟練技能労働者に新しい活動の場を提供することによって、熟年労働者の雇用拡大へ寄与し、それは日本の国際貢献ともなる。産業だけでなく、あらゆる分野において日本の経験と知識は後発地域においては役に立つと思われる。日本の経験と知識を東アジアにおける共有財産として活用したい。

 まず、東アジア地域の地方レベルの地方公共団体、産業界、大学などが、相互ネットワークを作り、交流を拡大することで、相互の文化・歴史・伝統について理解を深める。そのために、セミナーやフォーラムを開催し、講演会や公開講座を実施する。さらに、地方自治体の公務員や地方議会議員、商工団体や市民団体の研修団を受け入れて、教育プログラムを実施すると共に、日本における相応の団体と交流するように斡旋する。それを契機に相互訪問が実現され、各レベルでの交流が進展するものと考える。また、そのことが相互の経済活性化の促進剤となり、信頼関係の醸成によって、産業協力へ繋がり、共生共栄の方向に進展していくと思われる。

 とりあえず、日本との関係が深く、これからの発展の可能性を秘めている韓国・木浦圏と産・学・公の各レベルでの交流を推進し、その実績を元に韓国の他の地域、さらには台湾、中国などの東アジア地域に広げていく。これは日本の地域活性化および国際協力への寄与となり、東アジアの平和と安定並びに共生共栄への先導になると考える。

 これからは国境を越えて、地方および市民レベルの交流が必要であり、お互いに理解し、協力し、尊敬し合う関係の構築が重要である。 本アカデミーは、このような交流の促進剤となり、架橋の役割ができれば幸いである。

東アジア政経アカデミー 代表
大東文化大学名誉教授・Ph.D.
永 野  慎 一 郎